海水水槽の立ち上げ方!立ち上がるまでの期間は?

水槽をセットして水を張った直後では魚を飼育できる状態になっていません。

魚を入れる前に「水槽の立ち上げ」という作業が必要です。

マリンアクアリウムにおける水槽の立ち上げ方を解説し、実際の水槽立ち上げの様子をレポートしました。

「立ち上げるまでの期間はどれくらいか?」
「立ち上げとはどういうものか?」

などの疑問にお答えできるように海水水槽の立ち上げについて解説しています。

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水槽の立ち上げとは?

水槽の立ち上げとは簡単に言うと水槽を空回しして魚を入れれる状態まで待つことです。

水槽を買って器具をセットし海水を入れても、実は魚が飼育できる状態にはなっていないのです。
そのためセット直後に魚を入れてしまうと失敗してしまう確立が高くなります。

魚を入れてはいけない理由は生物濾過(ろ過)が機能していないからです。

生物濾過とは?

投げ込み式フィルター

生物濾過は水を綺麗にしてくれる濾過バクテリアによる水の浄化作用のことです。

魚の排泄物や食べ残しは時間の経過により有害物質であるアンモニアに変化します。
排泄物から出たアンモニアを毒素の少ない硝酸へと変えてくれるのが濾過バクテリアです。

この濾過バクテリアによる浄化作用が生物濾過です。

濾過装置はゴミ取りが一番の目的ではなく生物濾過のための装置になっています。

買ったばかりのフィルターでは濾過バクテリアがいないため生物濾過が機能せずに、アンモニアのまま残ってしまい魚を苦しめてしまい、そのため失敗に繋がってしまうのです。

立ち上げで必要なこと

つまり立ち上げで必要なことは濾過バクテリアが機能するまで待つということです。

濾過バクテリアの繁茂

濾過バクテリアは空中から飛来して水槽内で少しずつ増えていきます。
特にフィルターのスポンジ、濾材、ライブロックや底床などには多く繁茂していきます。

空中から飛来するほか、生物濾過が機能している別の水槽の飼育水を入れたり、市販品のバクテリアを導入する方法もあります。

生物濾過が機能するまでの期間

全て新品の設備でセット直後であれば2~3週間程だと言われています。

先述したように生物濾過が機能している飼育水を入れる等、外部から濾過バクテリアを導入した場合は立ち上げまでの期間を短くすることができます。

立ち上がったかどうかの確認方法

測定キットを用いてアンモニアが硝酸に変化したかを確認することが立ち上がったかどうかを確認することが出来ます。

測定については後述します。

立ち上げ方

海水水槽を立ち上げについて手順と行う作業を説明していきます。

水槽のセット直後

60cm水槽

ここで行うことは主に器具などの異常チェックです。

底床や器具をセットして海水を入れた後、異常がないかを確認していきます。

以下の項目をチェックしましょう。

  • 水漏れはないか?
  • 水槽台は大丈夫そうか?
  • 水中の比重は合っているか?
  • 器具は機能しているか?
  • ヒーター又はクーラーが機能しており水温は大丈夫か?

1日程空回しをしてみて、問題がないのであれば次はライブロックの導入です。

ライブロックの導入

ライブロックを導入すると後は濾過バクテリアが住み着くまで待つのみですが、シャコがいるかも確認しておくと良いです。

シャコがいないか確認する

ハナシャコ

購入してきたライブロックは有益な生物もあれば害のある生物もいます。
害のある生物として最も注意しなければならないのは「シャコ」です。

シャコは水槽内の魚やカニ・ヤドカリを食べることがあり、せっかく購入した魚達がシャコに食べられてしまいます

シャコはライブロックごと取り出して駆除するのが一番堅実ですので、生物濾過が効くまでの待ち時間に駆除を済ませてしまいましょう。

シャコがいる場合は夜間に「パチッパチッ」とライブロックの巣穴を整備する音が聞こえます

音が聞こえましたらシャコがいますのでライブロックをバケツに退避しながらシャコのいる場所を特定していきましょう。

濾過バクテリアが機能しているかを測定して確認する

簡単な検査キット

入れたばかりのライブロックでは環境の変化に伴い、ライブロックに付着している生物がある程度死滅してしまいます。
その為しばらくはライブロック自身からアンモニアが発生します。

アンモニアは濾過バクテリアによって最終的に硝酸塩へと変化していきますが変化には段階があります。

アンモニアは硝酸塩へと変わる前に濾過バクテリアである「亜硝酸菌」により亜硝酸へと変化します。
亜硝酸は同じく濾過バクテリアである「硝酸菌」により硝酸塩へと変化するのです。

つまり以下の流れになります。

  • アンモニア→(亜硝酸菌により)→亜硝酸→(硝酸菌により)→硝酸塩

濾過バクテリアが機能するということは亜硝酸菌と硝酸菌が定着しているということです。

(因みにこれら亜硝酸菌と硝酸菌は好気性バクテリアと呼ばれます)

アンモニアの測定

亜硝酸菌が繁茂していかどうかを確認するためにアンモニアの測定キットを用いてアンモニアの測定を行います。

アンモニアが検出されなかった場合は亜硝酸菌による「アンモニア→亜硝酸」の変化が機能しているということです。
アンモニアが検出された場合は亜硝酸菌が未だ繁茂していません。

測定キットは1,500円で入手が可能です。

最終的には硝酸塩になっていれば良いので無理に測定キットを買って測定する必要はあまりありません。

亜硝酸の測定

同じく硝酸菌が繁茂しているかどうかを確認するために亜硝酸の測定キットを用いて亜硝酸の測定を行います。

亜硝酸が検出されなくなった場合は亜硝酸菌による「亜硝酸→硝酸」が機能しています。

こちらも最終的には硝酸塩になってくれれば良いので省略しても可能です。

測定キットは1,000円~3.000円で入手が可能です。

以下のものは後述する硝酸も測定できるのでオススメです。私も使っています。

硝酸の測定

硝酸濃度を測定して最終的に濾過バクテリアが機能したかどうかを確認します。

こちらも硝酸塩の測定キットを用いて確認します。
測定キットは3.000円程で販売されています。

硝酸塩が検出された場合はアンモニアから硝酸塩への変化が確認できたため、濾過バクテリアが機能していると言えます。

濾過バクテリアが機能したら換水を行う

硝酸塩はアンモニアと比べると毒素が非常に低いのですが、毒であることには変わらないため換水が必要になります。

特にライブロックから出た汚れが大量の硝酸塩へと変化していますので溜まった硝酸塩を換水により排出する必要があります。

1/2の換水を1~2日程間を置いて2,3回行って下さい。

これで水槽の立ち上げが完了し、魚を入れれる状態になりました!

ベルリン式システムの立ち上げレポート

45cmキューブオーバーフロー水槽

実際に水槽を立ち上げて、その状態を測定しレポートしてみました。

水槽スペックは45cmキューブのオーバーフロー水槽で、フィルターを設置しないベルリン式システムです。

器具のチェック

器具を素組みした後、1日放置しました。
水漏れもしていないようなのでライブロックを入れていきたいと思います。

ライブロックの投入

ライブロックを投入してここからが立ち上げスタートです。
水質の測定を行って立ち上がったかどうかを確認していきましょう。

まずはアンモニアを処理するバクテリアが増えますので、アンモニアの濃度をチェックしていきます。

アンモニアを測定して亜硝酸菌が増えたかチェック

水槽内で亜硝酸菌が活動するとアンモニアは亜硝酸へと変化します。
つまりアンモニアの濃度を測定することで亜硝酸菌が活動しているかどうかが分かります。

使用した測定キットはテトラ社の液体による試験キットです。

アンモニアは毒性が高いため試験キットでアンモニアが検出される場合は、未だ魚を飼育できる環境ではありません。

測定した結果の表が以下になります。

経過日数 アンモニア濃度 mg/l
1日目 未測定
2日目 未測定
3日目 3.00
4日目 3.00
5日目 5.00
6日目 5.00
7日目 4.00
8日目 4.00
9日目 4.00
10日目 2.50
11日目 2.00
12日目 1.50
13日目 0.25
14日目 0.15
15日目 0.00

測定の結果、アンモニアが検出されなくなるまでは15日かかることが分かりました。

アンモニアは亜硝酸菌の活動により亜硝酸へと変化しています。

しかしながら亜硝酸も毒素があり、次に必要なバクテリアが硝酸菌です。

亜硝酸を測定して硝酸菌が増えたかチェック

亜硝酸は硝酸菌の活動により、より毒素の少ない硝酸塩へと変換することが出来ます。

同じく亜硝酸濃度を測定することで硝酸菌が活動しているかどうかを確認することができます。

測定に用いたのはテトラ社の液体による測定キットです。
測定結果は以下の通りです。

経過日数 亜硝酸濃度 mg/l
14日目 1.6
15日目 0.8
16日目 0.4
17日目 0.3

亜硝酸菌が繁茂していき0に近づいていることが分かりました。

ここまでくればバクテリアは機能している状態ですので、最後に硝酸塩を測ってみましょう。

硝酸塩を測定して最終確認を行う

硝酸塩濃度測定キット

最後に硝酸塩を測定しての水質の最終確認を行いましょう。
硝酸塩が検出されればアンモニアが最終的に硝酸塩に変化したと言えます。

測定に使用したものはレッドシーの硝酸塩テストキットです。

結果は以下の通りになりました。

経過日数 硝酸塩濃度 ppm
16日目 12ppm

予想通り硝酸塩が検出され、濾過バクテリアが定着していることが確認できました。

換水を行う

水が入ったバケツ

硝酸塩も毒性は低いものの多く蓄積されれば魚にダメージを与えてしまいますので、多すぎる硝酸塩は換水で除去が必要です。

あまり多くの水を換水すると折角定着したバクテリアにダメージを与えて死滅させてしまいますので1回の換水には水槽の半分までにしてください。

数日置いて何度か換水することにより硝酸塩濃度を減らしていきます。

硝酸塩濃度はどれくらいが良いのか?

硝酸塩濃度は魚であれば2,30ppmであれば健康的に飼育が可能なようですが、多くのハードコーラルは10ppm以下を必要とします。
そのため10ppmを切る程度を目安にしましょう。

飼育が難しいとされるミドリイシは1ppm以下と非常にシビアです。

参考:換水が必要なタイミングは硝酸塩濃度

濾過フィルターによる水の浄化作用ではアンモニアを硝酸塩に変化させて浄化を行いますが、硝酸塩は変化しません。
そのため硝酸塩は魚のフンや食べ残し等で日数の経過と共に少しずつ蓄積していきます。

そこで必要になるのが「換水」という作業です。
換水は溜まった硝酸塩を排出することが出来ます。

そのため水替えするタイミングは硝酸塩が溜まったタイミングが目安になります。

水質の最終チェック

換水してしばらく日数を置きましたら再度水質を測定しましょう。

経過日数 アンモニア濃度 mg/L 亜硝酸濃度 mg/L 硝酸濃度 ppm
19日目 0 <0.3 2.0

水質測定の結果、魚を入れれる状態になったことが分かりました。

もし硝酸塩濃度が10ppm以上を超えた場合は再度換水を行って硝酸塩濃度を下げてください。
※魚の場合は20~30ppmぐらいでも飼育が可能です。

ライブロックを入れてから19日目にしてやっと立ち上げが完了しました。

測定は必ず必要か?

サンゴ砂とヤドカリ

レポートでは水質の測定を行っていましたが測定自体は立ち上げには必須ではありません

測定は濾過バクテリアが定着し、実際に魚が買える状態になったかどうかを確認するために行っていますので測定自体は立ち上げに必要な作業ではありません。

ただし測定を行わない場合は水槽内の状態が分かりませんため、立ち上げ期間は余裕を持ってより多く期間を設けるようにして下さい

1ヵ月程待った後に換水を行えば大丈夫だと思います。

まとめ

水槽の立ち上げは「生物濾過が機能するまで待つ」ことです。

立ち上げについてのポイントをまとめました。

  • 立ち上げは生物濾過が機能するまで待つこと
  • 濾過バクテリアが機能するまではライブロックを入れてから17日かかった
  • 外部から濾過バクテリアを入れると立ち上げ期間を短縮できる
  • 水質を測定することで魚を入れれるかどうかが分かる
  • 測定を行わないなら余裕を持って1ヵ月程魚を入れるのを待つ

立ち上げ作業で硝酸塩の測定を行いましたが、硝酸塩の測定は日常の管理においても重要です。

魚の調子が優れない時に水質に問題がないかチェックしたり、換水頻度は適切かどうかなどを確認することができますので、今後の管理の一環にすると良いでしょう。

海水水槽立ち上げの参考になれば幸いです。

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