オーバーフロー水槽のポンプについて。流量の目安など【海水】

オーバーフローにおけるサンプとメイン水槽を循環させるポンプはある程度のパワーが必要で、適当なポンプを選ぶと力不足でより設備の性能を引き出すことができずに良い環境にしにくくなります。

クーラーや殺菌灯と接続を行う場合もあり、それらも踏まえてポンプを選ぶ必要があります。

マリンアクアにおけるオーバーフロー水槽のサンプとメイン水槽をつなぐポンプの選び方について説明します。

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水槽の水量を何回転させれるか

どのようなパワーのポンプが必要かどうかを決める基準には「水槽の水量を1時間で何回転できるか」というものさしが用いられることがあります。

ポンプを選ぶ基準は他にも静音性や耐久性もあるのですが、ポンプの役割としてどれくらいの水の量を送れるかが一番のポイントでそのほかの要素は機能的には全く関係ありません。

一般的な目安

概ね1時間で6〜20回転することが必要とされています。

これには飼育者の個人差があり、6回転で良いとしている人もいれば15回転ぐらいは必要とする考えの人もいました。

ではメーカーはどうでしょうか?

メーカーの推奨回転数

45cmキューブオーバーフロー水槽

海水水槽のオーバーフロー水槽のうち人気のあるリーファーナノを例にとって見ましょう。

リーファーナノの全体の水量は105リットルになっています。
レッドシーが推奨するリーファーナノのポンプ容量は2,000lphとなっておりますため、1時間に2,000リットル回転します。

2000÷105=19.04となり、メーカーの推奨では1時間に19回転ということが分かりました。

高さを加味して2,000lphと記載されている場合

ただし高さによる減衰を加味して流量が表示されているかが分からないため、もし高さも加味した値であれば数値が変わってきます。

例えばSICCEのシンクラサイレントの場合、2.0のモデルが「2,150lph」となり推奨の2,000lphを満たしますが、リーファーの高さである1.3mで使用する場合の流量は「1,200lph」まで落ちてしまいます。

この場合は1200÷105=11.43となり、メーカーの推奨は1時間に11回転ということになります。

プロテインスキマーの排出量

ベンチュリー式プロテインスキマーの構造図

そもそもサンプに水を送ることの目的を考えてみましょう。
サンプに水を送るのは加温や冷却のためもありますが、一番の理由はプロテインスキマーで処理するためです。

つまりプロテインスキマーが排出する水の量以上に水を回さないと、プロテインスキマーの能力を最大限引き出していないことになります。

では実際のプロテインスキマーの排出量を見ていきましょう。
こちらもリーファーナノに適応するスキマーを見ていきます。

カミハタ 海道達磨

カミハタの海道達磨はサンプに入れれるタイプのスキマーでは最も小型のプロテインスキマーになります。
外掛け式としても使えるので小さな水槽でも使えるのためスペックアップ時に継続して使えるので使用者も多いスキマーです。

メーカーホームページを見ると「毎時約360リットル」とありました。

つまりこのスキマーの性能をフルに使うには最低360lphを回せるパワーのポンプが必要ということが分かりました。

リーファーナノの水量なら「1時間に3.43回転」になります。
かなり少ないことを見るとリーファーナノに対して見劣りするスキマーであるということでしょうか。

オルカ BR-02

リーファーナノの輸入販売代理店のMMCが販売しているスキマーです。
サンプに入れれる大型のスキマーの中では壊れにくいACポンプを採用しており、初めてのスキマーとしてオススメされる定番のポンプです。

メーカーのホームページには排出量がありませんでしたので使用しているポンプのSK-200を調べたところ、「300gph」のようだということが分かりました。

単位がガロンなのでリットルに直すと「1135.62lph」になります。
このスキマーを使う場合は最低でもその流量を意識したいところです。

リーファーナノの水量でしたら「1時間に10.8回転」に相当します。

RLSS R-5i

RLSSのR-5iはリーファーナノに収容できる最も強力なプロテインスキマーです。
強力なDCポンプにより微細な泡を大量に生成するため、ミドリイシなどのSPS水槽に使用している人も多く定評のあるポンプです。

同じくメーカーのサイトには排出量が記載していなかったので使用しているポンプのWaveline DC-2500を調べたところ「2500lph」となっていました。

つまりこのスキマーの性能をフルで引き出すためには1時間に2500リットル排出させるポンプが必要だということが分かりました。

モデルの時点でオーバースペックなのですが、2,500lphだと1時間に23.8回転なのでメーカー推奨を上回っており、回転数で見てもリーファーナノにはオーバースペック感があります、、、。

ポンプに接続する機器の必要流量

ポンプにクーラーや殺菌灯を接続する場合は、器具に合わせた流量であることも必要になります。

水槽用クーラーの必要流量

水槽用クーラー「ゼンスイZC-100α」

こちらもリーファーナノに適合するクーラー、ゼンスイのZC-100αを例にとって見ましょう。

メーカーHPにはポンプ流量「5〜15L/min」とありました。
lphに換算すると「300〜900lph」になりますので、これに適合する流量で接続する必要があるようです。

殺菌灯の必要流量

殺菌灯であるカミハタのターボツイストZを例にとってみてみましょう。
リーファーナノに適合するモデルは9Wのモデルです。

メーカーHPによると適合循環水量は「5〜10L/min」とありましたので、これをリットルに換算すると「300〜600lph」の流量となります。

機器に必要なポンプ流量のまとめ

ここで一旦スキマーや殺菌灯など、調べた機器が必要とする流量を表にまとめます。
全てlphの単位で記載しています。

種類 器具名 ポンプ流量(lph) 1時間の回転数
(リーファーナノ)
プロテインスキマー カミハタ 海道達磨 360 3.43
プロテインスキマー オルカ BR-02 1136 10.82
プロテインスキマー RLSS R-5i 2500 23.81
クーラー ゼンスイ ZC-100α 300〜900 2.86~8.57
殺菌灯 カミハタ ターボツイストZ 9W 300〜600 2.86~5.71

表を見てみると、一般的に言われている「1時間に6~20回転」という目安もある程度的を得ているということが分かります。

高性能スキマーはかなりの流量が必要ですが、逆に殺菌灯は必要とする流量が低いです。

流量が合わない場合はポンプを別にする

オーバーフロー水槽の配管模様

RLSS R-5iの性能を引き出すためには「2500lph」ですが、カミハタのターボツイストZ 9Wは多くとも「900lph」のため両者のポンプ流量が合致していません

同じポンプで接続する場合は低い方のカミハタのターボツイストZ 9Wに合わせて使用しますが、そうするとせっかくの高性能スキマーの性能を引き出せないことになります。

高性能スキマーの能力を引き出すためにはカミハタのターボツイストZ 9Wに接続するポンプを別にするのが良いでしょう

逆に性能を引き出せないなら身の丈(ターボツイストZ 9W)にあったスキマー、BR-02などを使用するという選択肢もあります。

ポンプの選び方

以上を踏まえると設備に応じた必要な流量のポンプを選べば良いことになります。

しかしメーカーの最大流量と実際の流量は変わることに注意が必要です。
最大流量は何も接続しなかった場合の流量なのでホースで接続する以上、流量は落ちます。

排出地点の高さ

ポンプは高い場所に水を汲み上げるほど流量が落ちてしまいます

最低限サンプからメインタンクの配管に直接接続しただけでも1m以上の高さがあり、例えばリーファーナノであれば1.3mの高さがありますため、その分の損失が発生してしまいます。

そのため最大流量だけを見てポンプを選択するのは間違いです。

しっかりしたメーカーであれば高さと流量曲線の表またはグラフが記載されていますので参考にしましょう。

例えばSICCE(シッチェ)のシンクラサイレントでは以下のように記載があります。

シンクラサイレントの高さと流量グラフ

引用元:MMC HPのSICCEポンプページ

リーファーナノの高さである1.3mの地点を読むと「シンクラ1.5では700lph」、「シンクラ2.0では1200lph」、「シンクラ3.0では2200lph」ということが読み取れます。

つまり1000lphを確保しようとすると1.5では役不足で2.0が必要、2000lphを確保しようとするなら3.0のモデルが適合するということが分かります。

参考:揚程とは

シンクラサイレントの仕様表には揚程という項目があります。

揚程は簡単に言うとどのくらいの高さまで水を上げれるかを表したものです。
揚程が1.5mなら1.5mの水柱を作れるということです。

つまり揚程の高さは流量が0になる高さを表しています。
そこまで使えますというよという意味ではないので念のため。

接続機器による減衰

ポンプにクーラーや殺菌灯を接続する場合はより余裕を持った排出量のポンプを選びましょう

クーラーや殺菌灯を接続すると接続機器による抵抗を受けるため流量が落ちてしまいます。

私はシンクラサイレント2.0と3.0をゼンスイのクーラー、ZC-100αに接続して使っていました。
クーラーを1.5mの高さに置いているためクーラーの抵抗を考えなければ理論上2.0で600lph、3.0で1100lphとなるところがそれぞれ300lph、450lphまで落ちていました。

同じポンプで使用する場合はかなり余裕を持ったポンプを選ぶことが必要になってきます。
具体的に言えばシンクラサイレントでしたら3.0または4.0クラスが必要だと思います。

高性能なスキマーになればなるほどポンプは2台に分けた方が良いでしょう。

まとめ

オーバーフロー水槽のポンプ選びに必要なポイントを以下にまとめました。

  • 飼育設備に合わせた流量が必要
  • ポンプの流量をチェックする場合は高さに対応する流量を見る
  • ポンプにクーラーや殺菌灯を接続する場合は流量が落ちるので、余裕を持った流量のポンプを選ぶこと
  • スキマーとクーラー等の接続機器の流量が離れている場合は、ポンプを別にすることでスキマーの能力が低下しない。

ポンプ選びの参考になれば幸いです。

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